既に銀行借入があり、追加で借入をしたい場合、「私の会社はいくらまで借りられるか?」と思うことはありませんか?
銀行からの借入限度額は、あなたの会社の決算数値、将来性、資産状況、銀行との取引実績などにより総合的に決まるので、一概にいくらとは言えません。
ただ、一般的な目安はありますので、この記事では借入限度額の目安について取り上げたいと思います。
借入限度額を決める主な指標は4つある
借入限度額を決める主な指標として、
- 債務償還年数
- 借入金月商倍率
- 借入金依存度
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
があります。
以下で各指標について説明します。
債務償還年数
「債務償還年数」とは、手元に残るお金(キャッシュフロー)で借入金を返済する場合、すべて返済するまでにかかる年数を意味します。
債務償還年数の計算式は次のようになります。
債務償還年数 =(有利子負債 -正常運転資金 )÷ キャッシュフロー
各用語の定義は、銀行により若干異なりますが、たとえば下記のようになります。
有利子負債=借入金+割引手形+社債
正常運転資金=売掛金+受取手形+在庫-買掛金-支払手形
キャッシュフロー=経常利益-法人税等+減価償却費
債務償還年数は10年くらいが限度と言われています。
仮に10年とすると、
借入限度額の目安 = キャッシュフロー × 10 + 正常運転資金
となります。
借入金月商倍率
「借入金月商倍率」とは、借入金額が平均月商の何倍かを表した指標です。
借入金月商倍率の計算式は、次のようになります。
借入金月商倍率 = (借入金 + 割引手形) ÷ 月平均売上高
借入金月商倍率は、6倍くらいが限度と言われています。
(ただし、粗利率が低い卸売業では3倍くらいと言われています。)
仮に6倍とすると、
借入限度額の目安=月平均売上高×6
となります。
借入金依存度
「借入金依存度」とは、総資産のうち借入金がどのくらいの割合を占めるかを表した指標です。
借入金依存度の計算式は、次のようになります。
借入金依存度=有利子負債÷総資産
借入金依存度は50%くらいがギリギリと言われています。
仮に50%とすると、
借入限度額の目安=総資産×50%
となります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
「インタレスト・カバレッジ・レシオ」とは、営業利益が支払利息の何倍かを表した指標です。
これは、企業の金利負担能力を表しています。
インタレスト・カバレッジ・レシオの計算式は、次のようになります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益 + 受取利息 + 受取配当金)÷(支払利息 + 割引料)
インタレスト・カバレッジ・レシオが1倍以下になると、(営業利益+受取利息+受取配当金)< (支払利息+割引料)となり、利息の支払もできないことになります。
インタレスト・カバレッジ・レシオは1倍を限度とすると、
借入限度額の目安=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷平均支払利子率
となります。
まとめ
以上が、4つの指標から計算したあなたの会社の借入限度額の目安となります。
注意していただきたいのですが、あくまで目安であって、指標自体の解釈や重要度合いによっても変わります。
また、あなたの会社の事業が上向きか下向きか、将来の計画を描けているかなど、4つの指標以外にも影響する要因はあります。
つまり、4つの指標によって機械的に決まるわけではなく、あなたの説明次第でも大きく変わってきます。
実際に、私のクライアントでは、年商以上の借入に成功している会社もあります。
借りられるだけ借りた方が良い
あなたの会社の借入限度額を計算してみて、まだ借入できそうであれば、追加で借りられるように努力してみることをおススメします。
なぜなら、借入で資金を調達することにより、あなたの会社の事業拡大スピードをアップさせたり、競合との競争で優位に立ったりすることができるからです。
また、事業を行っていれば、悪い時期もあります。
その時期に資金が必要になっても、悪い時期ほど銀行は貸してくれません。
銀行は「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と言われます。
そのため、借りられるときに最大限借りておくべきです。
もしかしたら利息がもったいないと思うかもしれませんが、事業が悪化しても生き残るための保険料と考えてください。
日本は低金利なので、利息は倒産しないための保険料と考えたら、安いものだと思います。
問題は借りすぎではなく、ムダ遣い
「借りすぎで倒産のリスクが高まる」と言われることもありますが、借りすぎ自体は問題ではありません。
大事なのは使い道で、ムダ遣いが問題なのです。
借りても一切使わなければ、返済資金は手元にありますので、全く危険ではありません。
将来のリターンを生むものに、借り入れた資金を使えば、むしろプラスになります。
「お金があるとどうしてもムダ遣いしてしまいます」という場合は、対策を考えればよいだけです。
たとえば、支出を管理する「金庫番」を置きましょう。
ただ、従業員ですと、あなたに「No」と言えないかもしれません。
そのときは、必要に応じてあなたに「No」と言える外部の専門家を金庫番にすれば、ムダ遣いは発生しなくなります。
借りて返すことで信用がつく
意外に思うかもしれませんが、実は銀行に対しては、借りて返すことで信用がつくのです。
銀行は、融資取引がない企業を警戒します。
逆に取引があれば、信用がついていきます。
つまり、できるだけ早く多く借り始めて、早く多く返した方が、信用が蓄積して高まるのです。
銀行から全く借りていない企業に信用はありませんので、借入限度額までいきなり借りられることはありません。
段階的に借入を増やしていった結果として、限度額まで借りることができるのです。
そのため、何か決まった資金需要がなくても、理由をつけて借りられるだけ借りてみることをおススメします。
銀行借入を戦略的に行い、より多くの資金を調達したい方は、専門家にご相談ください。
私への相談は下記からお願いします。