銀行の融資を受けていると、「決算書を提出してください」と言われると思います。
そのとき、決算書を担当者にただ渡すだけで良しとしていませんか?
決算書を説明することで、次の融資につなげることができます。
決算書ができたときは銀行に対してアピールする絶好のタイミングなのです。
詳しくは、下記の記事を参照してください。
でも「具体的に何を説明すればよいやら、、、」と思うかもしれません。
そこで、当記事では銀行に対する決算説明のポイントについて解説します。
決算書で説明するのは、主に損益計算書と貸借対照表
決算書一式というと、いろいろな書類がありますが、説明する対象としては、主に損益計算書と貸借対照表の2つになります。
損益計算書の説明ポイント
損益計算書に関しては、売上と利益の推移に対する説明が中心になります。
また役員報酬と減価償却費については確認されるので、配慮が必要になります。
売上と利益は推移を説明する
売上に関しては、増えているのであれば、なぜ増えているのか、今後も増えるのかどうか、逆に減っているのであれば、なぜ減っているのか、今後回復できるのかどうかを説明することになります。
利益に関しては、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、税引後利益の5種類の利益に言及する必要があります。
まず売上総利益に関しては、いわゆる粗利になりますので、黒字でないと話にならないと思われてしまいます。
売上総利益に関しては、金額よりも売上との割合で見られますので、売上総利益率で説明すると良いです。
次に営業利益に関しては、事業としての利益に相当しますので、黒字であることが期待されます。
もし赤字なら、黒字化する目論見を説明する必要があります。
そして経常利益に関しては、継続的に得られる利益に相当しますので、黒字であることが望ましいです。
経常利益は大まかに言いますと、営業利益から支払利息を引いたもので、銀行が一番気にしている利益です。
なぜなら、経常利益が長期的に期待できる平均的な利益と言え、経常利益+減価償却費が、借入の返済原資になるからです。
経常利益が継続して黒字であれば、銀行に対して安心感を与えられます。
しかし、直近で黒字から赤字に転落していれば、一時的に赤字になっていることを説明する必要があります。
逆に、赤字から黒字に転換していれば、黒字が継続することを説明する必要があります。
税引前利益は経常利益に特別利益と特別損失を足し引きしたもので、税引後利益はそこから税金を引いたものです。
特別利益と特別損失は、一時的に見えるので、通常はあまり評価に影響しません。
そのため、損失はなるべく特別損失で計上できないか、特別利益に上がっているものでも、売上や営業外収益で計上できるものがないか検討した方が良いです。
役員報酬は少なすぎも多すぎも注意
役員報酬が少なすぎると、利益が過大になっていると判断されてしまいます。
逆に多すぎて、もしそのせいで赤字になっているのであれば、経営者としての感覚を疑われてしまいます。
役員報酬は現実的な範囲にしておくことをおススメします。
減価償却費は適正な水準を計上する
減価償却費は、税務上は計上しなくても大丈夫です。
そのため、利益が厳しくなると、減価償却費の計上を止めてしまう経営者が実際にいます。
ただし、減価償却費が少ないと、適正に計上した数字に銀行が補正して計算しますので、ごまかしは通用しません。
貸借対照表の説明ポイント
貸借対照表に関しては、純資産とそれに与える影響が説明の中心になります。
また借入金と預金残高も返済可能性の観点から銀行に着目されるポイントです。
純資産はプラスが大前提
純資産がマイナスに陥っていないかどうかが、銀行が確認する最も重要なポイントになります。
純資産は資産から負債を引いたものですが、これがマイナスだと負債が資産より多い、いわゆる債務超過の状態になります。
この状況は、資産を全て現金化できたとしても、負債の全てを支払えないことになりますので、銀行としては追加では貸せないという判断になってしまいます。
ではプラスであればOKかというと、そう単純ではありません。
回収できない資産や粉飾があって、実質はマイナスではないかという疑いを持たれますので、その点もクリアにする必要があります。
具体的には、売掛金、在庫、貸付金、仮払金が特に疑われます。
売掛金は回収できるか
売掛金は、月商とのバランスで適正な水準かどうか、不良債権がないか、架空売上に伴って計上され実態がないものがないかを確認されます。
疑われるような水準であれば、その理由を説明しておく必要があります。
在庫は滞留していないか
在庫も、月商とのバランスで適正な水準かどうか、不良在庫がないかを確認されます。
疑われるような水準であれば、その理由を説明しておく必要があります。
貸付金は回収できるか
銀行は貸付金を非常に嫌います。
なぜなら融資したお金が事業に使われず、どこか別の会社等に流れてしまっていることになるからです。
別の会社等ではなく、経営者へ貸していたとしても同様です。
経営者の場合は、返済するつもりがあるのか、何かに流用していないかも確認されます。
そのため、貸付金がある場合は、回収予定を説明するようにしてください。
仮払金はなぜ未処理か?
一時的に内容が判明しないため、仮払金勘定で処理することがあっても、決算書の段階までには解消しておく必要があります。
もし決算書に残っていたら、使途不明金ではないかと疑われるので注意して下さい。
現金は多すぎないか
預金残高は通帳などで銀行でも確認できますが、現金残高は銀行では確認できません。
そのため、現金が多いと、帳簿上だけで実際には存在しないのではないかと疑われます。
現金取引が多いと、税務署からも疑われやすいので、なるべく振込やカード支払いで、キャッシュレスにすることをおススメします。
借入金は多すぎないか
借入金は、6ヶ月分の月商や総資産の50%が限度という考え方もありますので、それらを超えてきていますと、追加の借入が難しくなります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
もし借入金が多くなっている場合で、追加で借入をしたい場合は、他行の融資意向などの話で融資を引き出せないか考えてみてください。
預金残高は十分か
預金残高は、月商2~3ヶ月分あると、何らかの理由で急に売上がなくなっても、2~3ヶ月は会社を存続させることができるので、銀行としても安心材料になります。
決算が悪ければ、計画を説明するしかない
決算の内容が悪い場合でも、一時的な要因や改善できる要因で悪かったのであれば、今後は良くなるという説明ができます。
そのときは、決算書だけを説明しても悪い印象を与えるだけなので、計画を作って、併せて説明する方が良いです。
そして、資金需要が赤字の補填と思われると借入はできないので、計画において前向きな投資として伝えるようにしてください。
まとめ
ここまでで銀行に対する決算説明のポイントを具体的に見てきました。
決算書の数字は事実ですが、事実にはいろいろな解釈が成り立ちます。
決算説明で当社の解釈を銀行に伝えることで、銀行としても融資をしやすくなるような捉え方をしてもらえるのです。
個々の会社でどのような説明をすればよいか、私に相談したい方は下記からお問い合わせください。