多くの経営者にとって、資金調達は悩みの種になっていると思います。
たとえば、
- 運転資金を確保したい
- 新規事業のための資金を調達したい
- これから起業したい
このように、経営者が資金を調達しなければならない場面は頻繁に訪れます。
ただ、一言に「資金調達」と言ってもさまざまな方法がありますし、企業の状況やステージによって適した方法が異なるものです。
そこでこのページでは、企業経営者が知っておくべき資金調達方法と、企業のステージに合わせたおススメをご紹介します。
資金調達の3つのタイプ
企業の資金調達方法は、大きく分けると、次の3つのタイプがあります。
- 1、 デットファイナンス
- 2、 エクイティファイナンス
- 3、 アセットファイナンス
それぞれについて説明します。
資金調達のタイプ1「デットファイナンス」
「デットファイナンス」とは、銀行借入や社債発行などの負債を増やすことにより、資金を調達する方法です。
メリット
メリットは、調達先が他の方法に比較して多い点です。
メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合など、調達先は数多くあります。
また、調達した資金に関連して支払う利息には、節税の効果もあります。
デメリット
デメリットは、返済義務がある点です。
会社の状況にかかわらず、調達した資金は、あらかじめ決められたスケジュールに従って返済する必要があります。
また、自己資本比率が下がるため、追加で資金調達するときの余力が下がります。
具体的な方法
デットファイナンスの具体的な方法として、以下の10種類があります。
政府系金融機関からの融資
日本政策金融公庫や商工組合中央公庫からの融資です。
銀行融資よりも金利が低かったり、審査が通りやすかったりしますので、最初に検討すべき方法です。
銀行融資
都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合などからの融資です。
事業開始して1~2期の決算が終わると、融資してもらえる可能性が高まります。
ただ、最初の融資では、貸し倒れリスクが高いと、銀行は評価します。
そこで、銀行は貸し倒れリスクを下げるために、信用保証協会の保証付融資にする可能性が高いです。
万が一融資した企業が返済できないときでも、融資額の80%(場合によっては100%)を企業に代わって、信用保証協会が銀行に返済してくれるからです。
手形割引
もし売上代金を手形で回収している場合、銀行に手形を売却する「手形割引」によって、売上代金を早期に回収することができます。
ただし、もし手形を振り出した会社が倒産した場合、銀行から手形を買戻さないといけません。
その場合は急な支出となり、資金繰りの予定が狂いますので、手形を振り出した会社の信用状態には注意する必要があります。
不動産担保ローン
企業の所有する不動産を担保にした融資です。
企業が融資を返済できない場合、銀行は不動産を売却して融資の返済に充てます。
そのため、たとえ企業の財務状況が悪くても、不動産の価値が高ければ、融資を受けられる可能性が高いです。
流動資産担保融資「ABL」
「ABL」とは、Asset-based Lendingの略です。
在庫、売掛金、手形、機械設備などの流動資産を担保にした融資を意味しています。
手形や不動産がない会社でも、在庫や売掛金はある場合が多いです。
積極的に取り組んでいる金融機関と、全然取り組んでいないところがありますので、前者を狙って、相談することをおススメします。
取引先から「借りる」
商品の納品前に、販売先から代金を支払ってもらえれば、仕入資金を「借りた」ことになります。
また、仕入先に代金を後払いすることで、仕入代金分を「借りた」ことになります。
ビジネスローン
通常の融資が受けられない場合でも、ビジネスローンなら受けられる可能性があります。
事業者金融・消費者金融だけでなく、銀行もビジネスローンを提供しています。
通常の銀行融資と比べて、審査が甘く、「無担保」「第三者保証人なし」「即日」でも融資を受けられる場合があります。
ただし、その分、金利が高めに設定されています。
法人カードでのキャッシング
経費支払いのために、法人がクレジットカードを利用することがありますが、カードにキャッシング機能が付いていることがあります。
個人のカードと同様に、キャッシングの限度額内で、コンビニATMでいつでも即時に引き出すことが可能です。
社債「少人数私募債」の発行
国債が、国が発行する債権であるのに対して、社債は会社が発行する債権です。
ソフトバンクなどが積極的に活用している資金調達方法です。
通常の社債は、発行手続きに多額の費用がかかりますので、会社の知名度と信用があり、多くの資金を集められる大企業しか発行できません。
しかし、少人数私募債は、49人以下の投資家に対して発行することができる社債で、費用がそれほどかかりません。
そのため、中小企業でも活用されている事例があります。
ただし、たとえ少数でも社債を購入してくれる投資家を集めることが最大の課題です。
投資家を集められる当てがある場合のみ、現実的に実行できる方法です。
家族や知人からの借入
企業の資金繰りが厳しく、他の手段で資金調達ができない場合、最終手段は家族や知人から借りることです。
この場合は、企業の状況よりも、個人として家族や知人から得ている信用に寄ります。
資金調達のタイプ2「エクイティファイナンス」
「エクイティファイナンス」とは、株式を発行して資本を増やすことにより、資金調達する方法です。
メリット
メリットは、返済義務がない点です。
また、自己資本比率が上がるため、追加の資金調達の余力が上がります。
デメリット
デメリットは、株式には経営に関与する権利が付いているので、経営に関して制約や説明義務が出てくる点です。
具体的な方法
エクイティファイナンスの具体的な方法として、以下の5種類があります。
ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
ベンチャーキャピタルは、スタートアップ・ベンチャー企業に出資をして株式を取得し、出資した企業の上場やバイアウト時に、株式を売却して利益を得ます。
そのため、ベンチャーキャピタルから出資を受けるには、革新的な技術やビジネスモデルで、将来大成功する可能性があると思われる必要があります。
エンジェル投資家からの出資
ベンチャーキャピタルと同じく、革新性のあるビジネスに投資し、上場やバイアウトによる利益を期待して投資する個人投資家です。
過去に上場やバイアウトで多額の資金を得た経営者が、エンジェル投資家になる場合が多いです。
エンジェル投資家は、ベンチャーキャピタルよりも早い段階で投資します。
金額はベンチャーキャピタルよりも小さいですが、起業時点で投資してもらえることもあります。
さらに、資金とは別のメリットとして、経営者として成功した経験に基づくアドバイスをもらえる点があります。
主要取引先からの出資
主要取引先から出資してもらうこともあります。
メリットは、出資により取引関係がより安定する点です。
一方で、決算や財務状況を知られてしまう点はデメリットになります。
クラウドファンディング(投資型)
インターネットで不特定多数の個人投資家から少額の投資を集める方法です。
クラウドファンディングは、商品の「購入型」や「寄付型」の方が多いですが、「投資型」も徐々に広がってきています。
株式公開・上場後の新株発行
資金調達として、最も大きな金額を調達できる方法が、株式市場での新株発行です。
ただし、ビジネス上、管理上のさまざまな条件を満たし、数年間にわたって準備する必要がありますので、簡単にできることではありません。
資金調達のタイプ3「アセットファイナンス」
「アセットファイナンス」とは、現在所有している資産を現金化することです。
メリット
メリットは、売りやすい資産の場合、すぐに現金を調達できる点です。
デメリット
デメリットは、売れる資産を所有していない場合は、使えない点です。
具体的な方法
アセットファイナンスの具体的な方法として、以下の9種類があります。
未利用資産を売る
利用していない資産で売れそうな資産を売ることで、資金を調達できます。
たとえば、不動産、社用車、有価証券など金融資産、中古市場がある機械設備、商標権や特許権などの権利です。
余剰な在庫を売る
販売状況に照らして、余剰になっている在庫を、通常よりも安くしてでも売ってしまえば、資金を回収できます。
売掛債権を回収する
期日を超えて未回収の売掛債権があれば、売掛先に督促して回収するようにします。
売掛債権を売る(ファクタリング)
売掛債権を担保に融資を受けるのではなく、売掛債権自体を売ってしまうこともできます。
売掛先の信用状態が良ければ、買い取ってもらえます。
万が一、売掛先が支払えなくなったとしても、補填する必要はありません。
ただし、その分、手数料が高くなっています。
利用中の資産を売る(セール&リースバック)
事業で利用している資産を売ると、資金は調達できますが、通常はその資産を利用できなくなってしまいます。
しかし、同時にリース契約を結ぶこと(リースバック)で、売っても使い続けることができます。
たとえば、不動産、社用車、機械設備を売ると同時に、買い手とリース契約を結び、毎月の利用料金としてリース料を払うことにします。
この方法によれば、資産を使いつつ、売却代金を一括で調達することができます。
敷金・保証金を回収する
オフィスや店舗、工場、倉庫などを借りている場合、6ヶ月~12か月の賃料相当分くらいの敷金や保証金を貸主に預けていると思います。
交渉により、これらの一部を返還してもらえることがあります。
ただ、交渉に応じてもらうためには、家賃を少し上げるなど、何らかのメリットを貸主に提供する必要があります。
事業を売る
複数の事業を行っている場合、一部の事業を売ることも資金調達方法の一つです。
今後の事業展開を考えて、主要事業とならないのであれば、他社に売り、資金を得ることができます。
法人保険を解約する
会社で契約している生命保険などの保険を解約して、解約返戻金を受け取ることができます。
また、解約しなくても、契約者貸付制度で、解約返戻金の一部を借りることもできます。
火災保険・地震保険の保険金請求で資金調達する
持ち家、所有している店舗や工場などで火災保険・地震保険に入っている場合は、保険金を請求できる場合が多いです。
たとえば、火災保険は台風などの自然災害でも保険金を請求できます。
資金調達のその他の方法
企業の資金調達方法は、ここまで説明した3つに大別できます。
これ以外にも、資金調達方法として有効なものがあるので紹介しておきます。
政府や自治体からもらえる補助金や助成金
補助金や助成金は、返済義務がないため、メリットが大きい資金です。
ただし、申請に手間がかかったり、先に支出しなければいけなかったり、入金までに6ヶ月~1年かかったりします。
そのため、短期的ではなく、長期的に取り組む余裕が必要です。
クラウドファンディング(購入型や寄付型)
クラウドファンディングにも種類があります。
購入型では、新商品や新サービスの企画者(資金調達者)が不特定多数の支援者から資金を得ます。その資金で新商品や新サービスを開発・製造し、支援者に資金の見返りとして提供します。
寄付型では、人々の共感を呼ぶようなプロジェクトの起案者(資金調達者)が不特定多数の支援者から資金を得て、プロジェクトを実行します。
この場合は、通常、支援者には見返りはありません。
いずれの場合でも、資金を集めるためには、多数の支援者を惹きつける魅力的な企画を提案する必要があります。
企業のステージ別おススメの資金調達
会社が資金を調達する方法は、ここまで紹介したとおりです。
では、どの資金調達方法を選べばよいのかというと、冒頭でも説明したとおり、企業のステージにより異なります。
ここからは、企業のステージ別のおススメ資金調達方法を説明します。
独立起業時に適した資金調達
独立起業時におススメの資金調達は、次の3つです。
政府系金融機関からの創業融資
日本政策金融公庫の創業融資が一番受けやすい融資です。
エンジェル投資家からの出資
あなた自身とビジネスアイディアがエンジェル投資家から評価されれば、出資してもらえる可能性があります。
クラウドファンディング(投資型)
調達した資金の使い道が多くの人に賛同されやすいものであれば、可能性があります。
スタートアップ・ベンチャー企業に適した資金調達
スタートアップやベンチャー企業に適した資金調達は次の3つです。
政府系金融機関からの創業融資
独立起業と同じく、日本政策金融公庫の創業融資が一番受けやすい融資です。
エンジェル投資家からの出資
あなた自身や経営チーム、進めているビジネスモデルがエンジェル投資家から評価されれば、出資してもらえる可能性があります。
ベンチャーキャピタルからの出資
同様に、ベンチャーキャピタルから評価されれば、出資してもらえる可能性があります。
中小企業(事業開始から3年以上)に適した資金調達
中小企業に適した資金調達は次の3つです。
政府系金融機関からの融資
日本政策金融公庫や商工中金などの政府系金融機関からの融資を受けていない場合は、まず検討すべきです。
民間金融機関からの融資
3年以上の実績があり、民間金融機関から借り入れもしやすくなっています。
補助金・助成金
入金まで時間がかかりますが、3年以上事業を行っていると、補助金、助成金を受けやすい状態になっていることが多いです。
まとめ
このページでは、企業経営者が知っておくべき資金調達方法と、企業のステージに合わせたおススメをご紹介しました。
このように資金調達方法はさまざまあり、企業のステージによって適したものは異なります。
そして同じステージの企業でも、それぞれの状況によって実行しやすい方法が異なります。
たとえば、スタートアップ・ベンチャー企業でもあっても、売上の見込みがあって、仕入代金が必要な状況であれば、民間金融機関から運転資金として融資を受ける方が簡単かもしれません。
また実行するときにも、それぞれコツがあるものです。
たとえば、政府系金融機関であれば、新型コロナ融資のように、新たに予算がついたものを狙ったり、銀行であれば、支店のノルマ達成につながるよう、銀行の決算期末までに融資が実行されるように申し込んだり、融資する側の事情も考慮すると、通りやすくなります。
そのため、資金調達の専門家にご相談されることをおススメします。
私への相談は下記からお願いします。